11月の医書五経とゴケイメシ 附 ダイコンとタラの本草学情報

先日の日曜日(11/12)は講座【医書五経を読む】の日でした。この日もなかなか盛りだくさんな内容でした。

11月の医書五経はこんな内容

①伝統鍼灸学会(広島大会)をふり返る
②症例検討(原南陽の文献『叢桂亭医事小言』記載の症例)
③症例発表(ステロイドによる副作用に対する鍼灸治療)
④鍼灸実技:脈診の三機を確かめる
⑤座学:脈診書『切脈一葦』 陰陽二脈[後篇]~邪正一源[前篇]


写真:刺鍼による脈の変化を確認する


写真:症例解説を行う足立先生

…以上のように目いっぱい勉強しました。勉強や実技にがんばった後は…当会恒例の宴です。
この日の宴メニュー(ゴケイメシ)は「みぞれ鍋」です。

どうも、季節の変わり目・天候の移り変わりが激しい今日この頃。11/8は立冬の日でしたね。
ノドや鼻に不穏な気配を漂わせるメンバーもいたので、治療実技+ゴケイメシでリフレッシュです。

11月のゴケイメシは「みぞれ鍋」

みぞれ鍋は大根おろしをたっぷり使った鍋レシピです。又の名を「雪見鍋」ともいいます。

写真:タラと大根おろしたっぷりのみぞれ鍋

さて、当会の「みぞれ鍋」は白を基調とした具材集めにこだわりました。そして主役のダイコンと対をなすのはタラです。タラは漢字で書くと「鱈」、みぞれ鍋にピッタリの魚といえますね。

みぞれ鍋のレシピ

みぞれ鍋のレシピ・MEMO

■ 材料
・大根(1本)
・タラ白身(1パック)
・タラ白子(1パック)
・白菜(1/4)
・白ネギ(2本)
・白マイタケ(1パック)
・白シメジ( 1パック)
・エノキ茸( 1袋)
・豆腐(1パック)
・牡蠣・むき身(2袋)
・うどん(4袋)
・鍋用スープ


写真:手分けして大根おろしを作ります

①大根の皮を剥いて、大根おろしを作ります。この鍋の主役は大根おろしです。
②野菜も適宜カットし、魚介類も下処理を済ませておきます。
③出汁こんぶで出汁を取っておきます。
④鍋に火をかけて、順次具材を投入。頂上にタラ白子を載せて、周りに大根おろしの雪を敷き詰めます。
⑤鍋蓋を閉じ、火が通ったら食事開始、いただきます。
お好みで、ポン酢や一味を振りかけて味変を楽しみます。
⑥鍋の第二部は牡蠣鍋
⑦鍋の第三部は〆のうどんです。

大根おろしを豊富にとれるので、胃にやさしく食欲も増しますね。
以下に恒例の食物本草情報です。

ダイコン(大根)の食物本草情報

まずは「みぞれ鍋」の主役、大根の情報です。(リンク先は国会図書館デジタルコレクションです)
『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)からのダイコン情報をみてみましょう。

『日用食かがみ』だいこん 萊菔
根は辛甘、葉は辛苦温。共に毒なし。
生食すれば氣を升(のぼ)す。然れども能(よく)痰を去り飲を逐ひ、又煙に咽(むせ)び死せんとするに絞汁を用れば速(すみやか)に効あり。
熟(にて)食すれば氣を下し能く穀を消し痰癖を去り、麫(麵)毒・魚毒・酒毒・豆腐の毒を解す。
又、大根の毒に中りたるには、生姜を用べし。

さらに名古屋玄医(字は閲甫)が記した『閲甫食物本草』(寛文9年(1669年)自序)からのダイコン情報です。

『閲甫食物本草』萊菔

根の円きを大根と曰い、長きを奈と曰う。

氣味、根は辛甘、葉は辛苦温、毒無し。
『唐本草』に曰く、氣を下し、穀を消し、中を和し、痰癖を去り、人を肥健にす。
蕭焫が曰く、関節を利し、顔色を理、五藏悪氣を練り、麵毒を制し、風氣を行らし、邪熱の氣を去る。
孟詵が曰く、五臓を利し身を軽くし、人をして白浄肌細ならしむ。
『日華』に曰く、痰を消し、欬を止め、肺痿、吐血を治し、中を温め、不足を補う。
寗原(寧原)が曰く、胸膈を寛し、大小便を利す。生にて食すれば渇を止め、中を寛す。煮食して、痰を化し、消導す。
汪機が曰く、魚鯹の氣を殺し、豆腐の積を治する。
愼微が曰く、楊億(楊文公)談苑に云う「江東居民の言く、芋を種(う)えて三十畝を計るに米三十斛を省す、蘿蔔を種ること三十畝計するに、米三十斛を益する、則ち知らんぬ、蘿蔔果して能く食を消す也」と。
宗奭が曰く、地黄・何首烏を服する人が萊菔を食すれば、則ち人をして髭髪白せしむ。世皆以為(おもえらく)、此の物の味辛く氣を下すこと速にして、然して生姜芥子は更に辛し。何ぞ止(た)だ能く散ずる而已(のみ)ならんや。蓋し萊菔は辛く而して又甘し、故に散緩にして而して又氣を下すこと速やか也。氣を散ずるに生姜を用い、下氣を下すに萊菔を用いる所以。
李九華が曰く、萊菔を多く食すれば、人の血を滲す。則ち其の人の髭髪を白すること盖し亦た此れに由る。独り其の氣を下し営衛を渋するに因るに非ざる也。
蘇頌が曰く、尤も能く麺毒を制する。

■原文

根圓曰大根、長曰奈。

氣味、根辛甘、葉辛苦温、無毒。
唐本艸曰、下氣、消穀、和中、去痰癖、肥健人。
蕭焫曰、利関節、理顔色、練五藏惡氣、制麵毒、行風氣、去邪熱氣。
孟詵曰、利五藏輕身、令人白淨肌細。
日華曰、消痰、止欬、治肺痿、吐血、温中、補不足。
寗原曰、寛胸膈、利大小便。生食止渇、寛中。煮食、化痰、消導。
汪機曰、殺魚鯹氣、治豆腐積。
愼微曰、按楊億談苑云、江東居民言、種芋三十畝計省米三十斛、種蘿蔔三十畝計、益米三十斛、則知蘿蔔果能消食也。
宗奭曰、服地黄何首烏人食萊菔、則令人髭髪白。世皆以為、此物味辛下氣速然生姜芥子、更辛何止能散而已。盖萊菔辛而又甘、故能散緩而又下氣速也。㪽以散氣用生姜、下氣用萊菔。
李九華曰、萊菔多食、滲人血則其白人髭髪、盖亦由此。非獨因其下氣澀營衛也。
蘇頌曰、尤能制麪毒。

※唐本草:新修本草(唐代659年  蘇敬による)のことか
※蕭焫は不明
※孟詵は唐代の医家、『食療本草』を著す
※日華とは、おそらくは『日華諸家本草』
※寗原とは寧源のこと。明代の人で『食鑑本草』の著者である。
※汪機とは、明代の汪機(1463-1539年)のことか。彼は朱丹渓の学説を継承する。著書に『本草会編』があるが…。
※愼微とは唐愼微のこと。唐代の医家。『経史証類備用本草』を著す。本記事「萊菔」に関する内容は巻二十七に記載。
※宗奭とは寇宗奭のこと。宋代の薬物家。『本草衍義』(1116年)の著者である。
※蘇頌:北宋の人物。北宋の宰相にして、科学者。文学・史学・数学・物理学・医学など多方面の學に精通した。彼の著した『本草図経』は(亜東書店さんの言葉を借りると)北宋時代における最新最全の薬物図譜である、という。

以上から、大根の性質は、生食と煮食とでその効能は異なることがわかります。
とくに氣の升降については、生と煮で大きな違いがありますね。
また胃に対する「消穀」作用は、現代でもよく知られるダイコンに含まれるジアスターゼの効果に通ずるものです。他にも毒消しの効能も指摘され、この点も現代でも薬味として生物・冷物に添えられるダイコンの性質を示していますね。

タラ(鱈)の食物本草情報

次は鱈(タラ)の効能です。

鱈 俗字。 『本草』の黄顙魚、多良(たら)に訓ず。『本草』に説く所を詳するに全く其の物ならず。

氣味、甘平 毒なし。諸病、之(鱈)を忌まず(閲甫)
或る人問う。鱈魚、諸医が皆謂う、血を破り腫瘍痛みを生ずると、之有るか?
(閲甫)曰く、凡そ肉裂(わるる)者、腫瘍に禁ず(※1)、皆な温補する故也。鮭・鯛・鯇(あめ ※2)など是也。鱈も亦肉裂(わる)とも、氣は温熱に非ず而して深く味い平なり。曷(なんぞ)痛みを生じ血を破る事有らんや!?
大抵、海の魚は皆な肉裂(わる)故に性温にて、脾腎を妨げず。河魚、肉は裂けず膏脂理密、氣は是(これ)以て烈(はなはだし)なり。
今の医の言う所の者は証(あかす)ことべからざる者甚だ多し。未だ曽つて其の性味形状を勘(かんがえ)ず。偶(たまたま)病の将(まさ)に発するの時に遭い而して之を食し、即ち病已に酷(ひどき)ときは則ち其の物に咎を帰す。此〱皆な然り。吁(ああ…)俗の習い已に久し。明哲も亦た之に惑疑する(惑わされる)こと有り。況んや昧き者をや…。

※1:「凡肉裂者禁腫瘍、皆温補故也。」この意は『素問』異法方宜論の「…故東方之域、天地之所始生也。魚鹽之地、海濱傍水、其民食魚而嗜鹹。皆安其處、美其食。魚者使人熱中、鹽者勝血。故其民皆黒色疎理。故其病皆爲癰瘍。」を指す。
※2:鯇…あめのうお。『延喜式』に出づ。和名抄に“あめ”と訓ず。…(略)…状(かたち)ます・さけに似たり。大きさ二三寸より二尺に過ぎず。肉赤く、梅雨中多く出づるを上とす。九十月に至りて、黒斑を帯びるは味わい劣れり。琵琶湖中多し。他(たこく)は稀にあり。生食に宜し。(『魚鑑』より)
以上の内容から、淡水に生息するサケ科の種を言うようである。アマゴ・ヤマメが海に降り、一年かけて成長し、再び川に遡上してくる。これをサクラマスと呼ぶ。また『魚鑑』文中には「琵琶湖に多し」とあり、この種はビワマスのことを言っていると思われる。

■原文
鱈 俗字 本艸、黄顙魚、訓多良。詳本艸所説全不其物。
氣味甘平無毒。諸病不忌之(閲甫)
或人問、鱈魚諸醫皆謂破血生腫瘍痛有之乎。
曰、凡肉裂者禁腫瘍、皆温補故也。鮭鯛鯇等是也。鱈亦肉裂氣非温熱而㴱味平。曷有生痛破血事乎。
大抵海魚皆肉裂故性温不妨于脾腎。河魚肉不裂膏脂理密氣是以烈矣。
今醫之㪽言者不可證者甚多。未曽勘、其性味形状、偶遭病將發之時而食之、即病已酷則歸咎於其物。此〱皆然。吁俗習已久矣、明哲亦有惑疑之。況昧者乎。

とあります。
次に『魚鑑』をみてみましょう。『魚鑑』(武井周作 著 1831年)は日本近海で獲れる魚介類の本草書です。本草的な情報だけでなく、当時の習俗や魚介類の漁獲地域などの情報も記録されていて、読んでいて面白い書であります。

たら

『東医宝鑑』に吴魚の名を出し、俗に大口魚(たいこうぎょ)という。又、鱈の字を用ゆ。
越前のもの天下に甲(だいいち)なり。蝦夷越後に多し。奥羽(陸奥・出羽)よりも出す(奥羽からも獲れる)。
皆な塩蔵(しおつけ)なり。塩によろしく生によろしからず。歳首(ねんじ)の節物(せつぶつ)なり。
一種いろ微黒(ねつみ)にして、痩小(きゃしゃう)なるものをしつこけだら、又すけとうだらという。
(あじわい)佳からずといえども、佐渡(すけと)金山(かねやま)に間近き所にて漁(と)るものは佳し。よりて“すけとう”という。
又、東都(えど)近海まれに、漁(すなど)り得るものもこれなり。
[氣味]甘平毒なし。
[主治]胃を開(ひらき)、食を消し、宿酒(ふつかよい)を解し、小水を利す。頗る血を破る。妊娠五ヶ月までは忌む。寒中子(卵)あり。塩蔵し酒媒(さけのさかな)となし、また魚飯(ぎょはん)となしてよし。又雲腸(くもわた)あり、即白䱊(しらこ)なり。

■原文
たら
東医宝鑑に吴魚の名を出し、俗に大口魚といふ。又、鱈の字を用ゆ。
越前のもの天下に甲なり。蝦夷越後に多し。奥羽よりも出す。
皆塩蔵なり。塩によろしく生によろしからず。歳首の節物なり。
一種いろ微黒にして、痩小なるものをしつこけだら、又すけとうだらといふ。
味ひ佳からずといへとも、佐渡金山に間近き㪽にて漁るものは佳し。よりてすけとうといふ。
又、東都近海まれに、漁り得るものもこれなり。
[氣味]甘平毒なし。
[主治]胃を開、食を消し、宿酒を觧し、小水を利す。頗る血を破る。妊娠五ヶ月までは忌む。寒中子あり。塩蔵し酒媒となし、また魚飯となしてよし。又雲腸あり、即白䱊なり。

とあります。

鱈(たら)もダイコンと同じく、健胃効果や消穀消食作用が記されています。また鱈は破血効果を持つことが広く知られていたようです。しかし名古屋玄医はその説を一蹴していますね。
また『魚鑑』にある「宿酒を解し、小水を利する」という性質も、酒飲みにはありがたい能です。

惜しいのは「タラの白子」の本草的性質が記載されていなかった点。できれば白子の薬能も知りたかった…。
ということで、今回のゴケイメシの食物本草的記事はココまで。

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