12月のゴケイメシLunchは年越し蕎麦

2023年最後の講座は12/24に開催された講座【生老病死を学ぶ】でした。この日はクリスマスイブなので、講座後の打ち上げ(宴)はなく、お昼休憩の際にゴケイメシ・Lunchを皆でいただきました。

12月の講座【生老病死を学ぶ】はこんな内容

①鍼道五経会の流儀を再確認
➢ 診鍼一致・診鍼一貫について
➢ 脈の五要素について
➢ 「衛氣の鍼」と「営氣の鍼」そして神氣について
②鍼灸実技:浅層と深層の鍼

以上の内容を学びました。


写真:複層に対する鍼治実技を行う森先生


写真:鍼道五経会の流儀について講義を行う足立先生

12月のゴケイメシは「ひと足はやい年越し蕎麦」

当会のシェフ川合先生が朝から買い出しに行き、蕎麦を茹でてくれました。薬味は辛味大根をたっぷりすりおろして、おろし大根と蕎麦でひと足はやい年越し蕎麦をいただきました。
鍼治療を受け“たて”、大根をおろし“たて”、茹で“たて”の蕎麦と、三たてでいただきました。
※本来の「蕎麦の三たて」は“挽きたて”、“打ちたて”、“茹でたて”だとされています。


写真:茹でたてどっさりの蕎麦と薬味の大根おろし

さて以下には恒例の食物本草情報です。

そば(蕎麦)の食物本草情報

まずは「みぞれ鍋」の主役、大根の情報です。(リンク先は国会図書館デジタルコレクションです)
『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)からの「そば(蕎麦)」の情報をみてみましょう。

『日養食鑑』の蕎麦情報

『日用食かがみ』そば 蕎麥

甘、微寒。毒なし。
毒なし、腸胃を寛し氣を降す。

そばきり 河漏

氣味、前に同じ。疝積ある人、多食すれば風氣を動し、腹痛を発す。

○世俗の云、河漏を食して後に湯に浴すれば卒中風の病を発すといふ。余、稀に此症を見ることあり。必ず大食する人にあり。慎べし。
又、小兒多く食へば風氣を動して天吊(ひきつけ)を発す。
○酔後二三椀を食すれば胃を開き食を推して大小便を通し妨なし。
▲くるみ西瓜うなぎ餅ろ差合。

そばがき 黑兒

甘温、毒なし
性寒なれども、そばかきに作れば腸胃を温め下利を止め、風氣を動すことなし。
○そばの毒に中りたるには大根の絞汁、又は楊梅皮を煎し用れば速効あり。

次に名古屋玄医(字は閲甫)が記した『閲甫食物本草』(寛文9年(1669年)自序)からのそば(蕎麦)情報です。

『閲甫食物本草』の蕎麦情報

『閲甫食物本草』蕎麥 曽波

蕎麦 曽波  附 蕎麦切(そばきり) 蕎麦錬餅(そばねりもち)

氣味、甘平、寒。毒なし。
孫思邈が曰く酸微寒。これを食して消し難し。久しく食すれば風を動じ、人をして頭眩せしむ。麺を作するに、猪羊肉と和して、熱食すれば八九日を過ぎず、頓ろに即ち熱風を患う。鬚眉は脱落し、還生するも亦た希(まれ)なり。
孟詵が曰く、腸胃を寛げ、氣力を益し、精神を続け、能く五臓滓穢を錬る。
頴が曰く、『本草』に言く、蕎麦は能く五臓滓穢を錬る。俗に言う、一年の沈積が腸胃に在る者は之を食して、亦消し去る也。
李時珍が曰く、蕎麦は最も氣を降し腸を寛くす、故に能く腸胃の滓滞を錬て、而して濁帯・洩痢・腹痛・上氣の疾を治する。氣盛んに湿熱の有る者これに宜し。若し脾胃虚寒の人は之を食するときは、則ち大いに元氣を脱し而して鬚眉を落とす。宜しき所に非ずや!孟詵が云う氣力を益すという者は殆ど未だ然らざる也。
閲甫が按ずるに、蕎麦の性は皆寒。然るに今の人、冬月に之を食して身の暖かなるを自覚するときは、則ち性寒と言う者、予これを疑う。又、蕎麦切と錬餅は同物にして錬餅は之を食して中者を見ざるは、胸を麻して多食すること能わざる也。蕎麦切りは多食するに因りて害を被る者甚だ多し矣。

■原文 蕎麥 曽波  附 蕎麥切 蕎麥錬餅

氣味甘平寒無毒。
思邈曰酸微寒、食之難消、久食動風、令人頭眩。作麵和猪羊肉、熱食不過八九、頓即患熱風、鬚眉脱落、還生亦希。孟詵曰寛腸胃、益氣力續精神能錬五藏滓穢。頴曰、本艸言、蕎麥能錬五藏滓穢。俗言一年沈積在腸胃者食之、亦消去也。時珍曰、蕎麥最降氣寛腸、故能錬腸胃滓滞、而治濁帯洩痢腹痛上氣之疾、氣盛有濕熱者宜之。若脾胃虚寒人食之、則大脱元氣而落鬚眉、非㪽宜矣。孟詵云、益氣力者殆未然也。
閲甫按、蕎麥性皆寒。然今人冬月食之自覺身暖、則言性寒者、予疑之。又蕎麥切錬餅同物而錬餅食之不見中者、麻胷不能多食也。蕎麥切因多食被害者甚多矣。

※孟詵は唐代の医家、『食療本草』を著す
※汪頴とは、明代の医家『食物本草』の汪頴版を刊行した。

以上には、蕎麦の性質に加え、蕎麦切と蕎麦練り(蕎麦がき)の食物本草能も加えられています。

蕎麦の性寒とお酒の相性は?

蕎麦自体の性質は、性が寒であり、腸胃を寛げ、氣を降ろすという説を李時珍が推しています。石川元混はそれをそのまま採用し、名古屋玄医は蕎麦の性寒を強く推しています。

個人的には蕎麦の性寒と日本酒の相性も良さそうでは?と思うのです。
しかし、蕎麦のサブエフェクト?である動風作用を考慮に入れると、やはり日本酒も蕎麦もほどほどが良いようです。それよりも後述の薬味としての大根の役割の方が重要となるでしょうね。

蕎麦切り・蕎麦練りの食物本草情報も…

 

名古屋玄医は蕎麦の性寒なることからその弊害を気にしています。とくに蕎麦切りを過食することで害を受ける人が多かったようです。その反面、蕎麦練りの害が少ないのは「胸に麻して(胸に痞えて)多食することができないからだ」としています。
石川元混は「そばかきに作れば腸胃を温め下利を止め、風氣を動すことなし。」として、調理法で性が微寒から温に変わることを暗に示唆していますが、うーむ…どうでしょう…。

実際の蕎麦練り(蕎麦がき)の画像をみると、その形状から多食できない、もしくはよく噛んで食べる形状であるため、胸に痞える可能性は少ないとみえます。一方、蕎麦切りはツルツルッと食べることができるため、思いのほか過食してしまう可能性は大いにあるかと思います。
これは今日のお蕎麦も同様で、通説にある「江戸っ子は蕎麦をのど越しで味わう」という通な食べ方をしてしまうと、尚のこと「脾胃虚寒の人には大いに元氣を脱し(李時珍説)」たことでしょうね。

とはいえ、蕎麦と練餅を実際に食べ比べてみないと断定できないものがありますね。

また、蕎麦そのものが持つ「五臓の滓穢を錬る」から、俗説にも「一年の沈積が腸胃に在る者は之を食して、亦消し去る也。」ということが知られていたようです。この説は“年越し蕎麦”の由縁として考えても面白そうですね。

お蕎麦と大根の相性については

『日養食鑑』に「そばの毒に中りたるには大根の絞汁……用れば速効あり。」とあり、蕎麦とダイコンの相性についても言及されています。

ダイコンについての詳しい情報は、以前の記事「大根(ダイコン)の食物本草能」を参考にしてください。

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