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5月の講座【生老病死を学ぶ】は…
昨日の第4日曜日は定例講座【生老病死を学ぶ】の日でした。
今回は実技多めの回でした。実技テーマは「緩急」もしくは「序破急」を意識した治療です。不明瞭なテーマなので、なかなか難度の高い実技かもしれませんが、それだけに実践的な実技でありましたね。
また、押し手を一つ意識するだけで、治療全体の流れがガラリと変わる体験もしてもらいました。このようなことからも基礎の重要性が痛感できますね。
さて勉強会後の打ち上げ・ゴケイメシに関するネタです。
今回のゴケイメシのメインはソトメシ・鉄板焼きで馬肉をいただきました。以前に購入した「馬肉ハンバーグ」「馬の心臓・ハツ」「馬肉(赤身ロースとバラ肉)」でした。
5月のゴケイメシの内容は…
赤身の美しさで知られる馬肉です。ずっと以前に購入した馬の心臓(ハツ)とハンバーグが冷凍庫に眠っていたのを発見。さらに楽天さんで馬肉(赤身とバラ肉のブロック)を購入。天気もよいのでBBQ・鉄板焼きです。
写真:まずは以前に近所の馬肉専門店で購入した馬肉ハンバーグ
写真:楽天さんで購入した赤身ブロックとバラ肉。赤身ブロックは赤身と脂身が3:7くらいでほぼ脂身…orz
写真:念のため牛赤身と豚肉を用意しててよかった。
楽天購入の馬肉の脂の多さには閉口しましたが(揚げ物ができる位…)、まぁそれでもBBQは楽しむことができました。それでも『もうこれ以上は焼いても食べれない…』と判断し、その日のうちに馬肉(バラ)と豚肉は生姜と醤油で煮こみ、次の宴に持ち越しです。
この豚と馬の煮込み(一六煮と命名)は禁断の食べ合わせでもあります。(詳しくは下記の本草情報を参照のこと)これも実際に食して実験するとしましょう。
ということで食物本草のお勉強です。今回はお馬さん(馬肉)の食物本草能を紹介しましょう。
ウマ(馬肉)の食物本草情報
いつもであれば『日養食鑑』(石川元混 著 1819年)から紹介するのですが、本書にはお馬さん情報はみつかりません。「ウ」「ム」の項目ともに見つからず…。ですので、次の本草書『閲甫食物本草』に移りましょう。
『閲甫食物本草』に記されるウマ(馬肉)の効能
純白牡馬者を以て良と為す。
氣味、辛・苦・冷、有毒。
『名医別録』に云く、中を傷り熱を除く、氣を下し、筋骨を長じ、腰脊を強く、壮健にし、志を強く、軽身、飢えず(「不肌」とあるが「不飢」の誤りであろう)。
鼎曰く、馬、自ら死する者は食うべからず、人を殺す。
時珍が曰く、馬を食うて毒に中る者は蘆菔の汁を飲み、杏仁を食せば解するべし。
閲甫が曰く、『別録』に言う所の如きは則ち、馬肉は人を益するが如きも、諸賢は皆な有毒と言うときは、則ち決して食うべからざる者也。
※蘆菔とはアブラナ科野菜の名、大根など。
■原文
以純白牡馬者為良。
氣味辛苦冷、有毒。別録云、傷中除熱、下氣、長筋骨、强腰脊、壮健、强志、軽身、不肌。
鼎曰、馬自死者、不可食、殺人。時珍曰、食馬、中毒者飲蘆菔汁、食杏仁可觧。
閲甫曰、別録如所言、則馬肉如益人、諸賢皆言有毒則決不可食者也。
とあります。どうも不穏な言葉が並んでいますね。さらには岡本一抱の『公益本草大成(和語本草綱目)』をみてみましょう。
『公益本草大成』に記されるウマ(馬肉・馬乳・陰茎など)の効能
馬[肉]
辛苦冷、有毒。食う勿れ。
[乳] 甘冷。渇を止め熱を治する。
[白馬陰茎] 陰を起こし肉を長ず。
[牙歯] 灰に焼き唾にて調へ、癰疔に塗れば根を出す。
[白馬溺] 辛微寒 癥瘕積聚を治し、蟲を殺す。
[白馬屎]血を止め打傷を治す。
野馬
[肉] 甘平。周痺不仁を治す。
[陰茎]陰痿を治す。馬に似て小さし。皮を取りて裘と為す。
■原文
馬肉
辛苦冷、有毒。勿食。
[乳] 甘冷。止渇治熱。
[白馬陰莖] 起陰長肉
[牙齒] 焼灰唾調、塗癰疔出根。
[白馬溺] 辛微寒 治癥瘕積聚、殺蟲。
[白馬屎]止血治打傷。
……
野馬
[肉] 甘平。治周痺不仁
[陰莖]治陰痿。似馬而小。取皮爲裘。
とあります。一応、野馬(野生の馬)の情報も載せておきます。もう一つ、本草書で名高い『本草綱目』を調べてみましょう。
『本草綱目』における馬肉情報
馬
純白牡馬の者を以て良と為す。
【氣味】辛・苦・冷、有毒。
詵曰く、小毒。
士良曰く、大毒有り。
思邈曰く、無毒。
日華に曰う、只だ煮て食うに堪えたり、余食は消し難し。漬すに清水を以てす、搦洗し血尽きて乃ち煮る。然らざるときは則ち毒出でて疔腫を患う。或いは曰く、冷水を以て之を煮るに釜を蓋せず。
鼎曰く、馬生角、馬無夜眼、白馬靑蹄・・・食うべからず。……
蕭炳が曰く、痢を患い、疥を生ずる人は食う勿れ、必ず加劇す。妊婦は之を食せば、子を冷し月を過ぎ乳母が之を食えば、子をして疳瘦せしむ。
詵曰く、倉米蒼耳と同じく食えば必ず悪病を得る、十に九死あり。生姜と同じく食えば氣嗽を生ず。豬肉と同じく食せば霍乱を成す。馬肉の毒を食うて、心悶を発する者は、清酒を飲めば則ち解する。濁酒を飲めば則ち加わる。
弘景曰く、秦穆公の云う、駿馬の肉を食うて酒飲まざるは必ず人を殺す。
時珍が曰く、馬を食うて毒に中る者、蘆菔の汁を飲み、杏仁を食して解すべし。
【主治】中を傷り熱を除き、氣を下し、筋骨を長じ、腰脊を強め、壮健、志を強くし、軽身、飢えず。
脯を作して、寒熱痿痺を治する。(別録)
汁に煮て頭瘡白禿を洗う(時珍○『聖恵』に出づ。)
……
心 以下、並びに白馬を用いて良し。
【主治】 喜忘(別録)
『肘后方』心昏、多忘を治する。牛・馬・豬・鶏の心、之を乾して、末と為し酒にて方寸匕を服する、日に三たび、則ち一を聞いて十を知る。
詵が曰く、痢を患う人、馬の心を食せば、則ち痞悶の加わること甚し。
■原文
以純白牡馬者為良。
氣味辛苦冷、有毒。
詵曰、小毒。士良曰、有大毒。思邈曰、無毒。日華曰、只堪煑食餘食難消、漬以淸水、搦洗血盡乃煑。不然則毒不出患疔腫。或曰、以冷水煑之不可葢釜。鼎曰、馬生角、馬無夜眼、白馬靑蹄・・・
蕭炳曰、患痢、生疥人勿食、必加劇。妊婦食之冷子。過月乳母食之令子疳瘦。
詵曰、同倉米蒼耳食必得惡病、十有九死。同薑食生氣嗽、同豬肉食、成霍乱、食馬肉毒、發心悶者、飲淸酒則解。飲濁酒則加。
弘景曰、秦穆公云、食駿馬肉、不飲酒、必殺人。
時珍曰、食馬中毒者、飲蘆菔汁、食杏仁可觧。
[主治]傷中除熱、下氣、長筋骨、强腰脊、壮健、强志、軽身、不飢。作脯、治寒熱痿痺。(別録)煑汁洗頭瘡白禿(時珍○出聖恵)
……
心 已下並用白馬者良。
主治 喜忘(別録)肘后方、治心昏多㤀牛馬豬鶏心乾之、爲末酒服方寸匕、日三、則聞一知十。
詵曰、患痢人食馬心、則痞悶加甚。
以上の本草書の情報を総合してみるに、どの書にも「毒あり」と記されています。また同様に馬肉の性として「冷」とあり、この性質は共通しているようです。
表現を変えると、馬肉の性冷が強すぎるため、その影響力が「毒あり」との表現になるのではないかと推察します。故に煮食という加熱して食するべし、との但し書きが付記されているのでしょう。
となると、保存技術・設備が発達した近年では、“馬刺し”という実に美味なる食べ方がありますが、あれは薬膳的にみると厳禁な食べ方なのでしょうね。
『本草綱目』に収録される『日華(日華諸家本草か)』の一節「…煮る。然らざるときは則ち毒出でて疔腫を患う。或いは曰く、冷水を以て之を煮るに釜を蓋せず。」との言葉も馬肉の性質をよく表わしていると思います。この点、海の魚の性質とは正反対の氣味であると思うところです。
鍼道五経会 足立繁久
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