経の要所

要となる部位や重要器官だからこそ、諸経が…

経脈の流注にはいくつかの要所があります。以前記事に挙げた「名のある交会穴」もその一つ。しかし各経が交わり会するのは経穴だけではありません。人体の各部位・各器官に諸経は交わり流れ込んでいるのです。
要となる部位、重要器官であれば、複数の経が流れ込み、連絡するのは自然の理といえましょう。


画像は敦煌、莫高窟の写真(Photo ACさんよりDL)
交通の要所といえば、思い浮かべるのは“シルクロードにおける敦煌”。シルクロードを中国から欧州に向かうルートでは敦煌で南北のルートに別れる。南に向かうルートは西域南道と呼ばれ、北に分かれたルートはさらにトルファンで天山北路と天山南路に分岐するという。人の行き来、物流の流れには自然と道ができる。そしてその道にはまた自然と要所ができる。
ちなみに敦煌では数々の文書が発見されている。いわゆる敦煌文献と呼ばれるものである。これら文献に中に医書・医経もあり、その中に『傷寒論・辨脉法』『脉書』『張仲景五臓論』『灸経明堂』……などの一部が発掘されている。詳しくは『英藏敦煌醫學文献圖影與注疏』(人民衛生出版社)などを参考にされたし。

さて本記事では、個人的に気になる人体の要所をピックアップしました。これらの部位は臨床での診断や治療において重要となることが多いのです。

また関与する経としては「経脈」の直・支だけでなく「別絡(いわゆる絡穴からのルート)」「経別」「経筋」をも含めております。
これは三陽五会(百会)に足太陽の経脈・手少陽の経別・足少陽の経筋が含まれていることに倣っています。
また奇経流注の情報も併せてピックアップしていますが、主に『奇経八脈攷』(明代 李時珍)の情報を採用しています。

また『霊枢』(主に経脈篇・経別篇・経筋篇)中の記載を(一部)引用しています。具体的な記載内容を知ることで、実際の流れ・方向や関与の度合いが幾分イメージしやすいと思われるからです。

缺盆

ここでいう缺盆とは、経穴(陽明胃経の鈌盆穴)ではなく広義の鈌盆すなわち鎖骨上窩を指します。美容業界でいうところのデコルテにこの鈌盆が含まれていると思われますが、この鈌盆のエリアを通過し関与する経脈は意外と多いのです。

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 手太陰肺 (経別・経筋);《経別篇》「上出缺盆」;《経筋篇》「出缺盆」「上結缺盆」
➣ 手陽明大腸(経脈・経別);《経脈篇》「下入缺盆」「從缺盆上頸貫頬」;《経別篇》「出缺盆」
➣ 足陽明胃 (経脈・経筋);《経脈篇》「入缺盆」「從缺盆下乳内廉」 ;《経筋篇》「至缺盆而結」
➣ 手太陽小腸(経脈)   ;《経脈篇》「入缺盆絡心」「從缺盆循頸上頬」
➣ 足太陽膀胱(経筋)   ;《経筋篇》「上出缺盆」「出缺盆」
➣ 手少陽三焦(経脈・経別);《経脈篇》「入缺盆」「從膻中上出缺盆」;《経別篇》「入缺盆」
➣ 足少陽胆 (経脈・経筋);《経脈篇》「入缺盆」「下頸合缺盆」「從缺盆下腋」;《経筋篇》「結於缺盆」「貫缺盆」

◆奇経
➣ 陰蹻脈;「入鈌盆上」(『奇経八脈攷』)
※陽維脈の流注記載では「過肩前、與手少陽會於臑会、天髎〔…天髎在鈌盆中、上毖骨際、陥中央〕…」(『奇経八脈攷』)とあり、缺盆部にある天髎穴にて手少陽三焦経と会することを記している。

缺盆の近くに位置する肺臓の経も缺盆に関与することはさほど不思議ではありませんが、六腑の経はすべて缺盆に関わっています。
このようにみると、経の多くは缺盆に“出入”しています。とくに手足の三陽経は缺盆を一つの要所として体腔内に連絡している節もあります。非常に重要な情報だといえるでしょう。

氣街

缺盆と同様、氣街も穴名ではなく体の部位としてみています。

 [主経名](経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 足陽明胃(経脈) ;《経脈篇》「入氣街中」「下至氣街中而合」
➣ 足少陽胆(経脈) ;《経脈篇》「出氣街」

◆奇経
➣ 衝脈:「起於氣街」(『奇経八脈攷』)
※帯脈為病では「張子和曰……傳流於氣衝…。」張子和の説として、氣街ではないものの氣衝部に流れることを引用付記している。(『奇経八脈攷』)

上記からは缺盆ほど多くの経の連絡はみられません。
氣街に注目したのは胃経の流注、缺盆-氣街の直脈と支脈の小循環に注目したかったです。
足三陽経では胆経・膀胱経にも頭部から下半身への各経がもつ小循環にも注目したいところですね。

氣街という言葉に限らなければ、足三陽経においては髀が要所となります。
「過髀枢(膀胱経)」「下髀関(胃経)」「下合髀厭中(胆経)」とあり、髀において合するのは胆経のみ。胃経は「氣街中」にて合し、胆経は「髀厭中」に合し、そして膀胱経は「膕中」にて合します。
太陽膀胱経においてこの膕は特殊な部位であり、腎経とも関与する部位です。この情報から膕に用い方、経穴名では委中・委陽の用い方も変わることでしょう。

胸中

胸中も臨床上で常用な部位です。一見したところ呼吸器疾患に関係の深い場所として認識されるでしょうが、さにあらず。種々の症候に関与する部位でもあります。その証拠として以下に引用した関与経も肺経のみにあらずです。

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 足太陰脾 (経筋);《経筋篇》「散於胸中」
➣ 手少陰心 (経筋);《経筋篇》「結於胸中」
➣ 足少陰腎 (経脈);《経脈篇》「注胸中」
➣ 手厥陰心主(経脈・経別・経筋);《経脈篇》「起於胸中」《経別篇》「入胸中」《経筋篇》「散胸中」
➣ 手少陽三焦(別絡・経別);《経脈篇》「注胸中合心主」《経別篇》「散於胸中」
➣ 足少陽胆 (経脈);《経脈篇》「以下胸中」

◆奇経
➣ 衝脈:「至胸中而散」(『奇経八脈攷』)

胸中に対して経が「散ずる」「結ぶ」「注ぐ」の三つのパターンがあります。※単に胸中に「入る」というのは省略しています。
これら3つの表現は胸中に対する経の作用を連想させます。さらにその経が経脈なのか経筋なのかで「散ずる」「結ぶ」「注ぐ」の意味合いも変わってくることは言うまでもありません。(経筋で「注ぐ」の記載はありませんが)

膈も診断や治療の上で関与する経を知っておくべきでしょう。

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 手太陰肺 (経脈);《経脈篇》「上膈屬肺」
➣ 手陽明大腸(経脈);《経脈篇》「下膈」
➣ 足陽明胃 (経脈);《経脈篇》「下膈」
➣ 足太陰脾 (経脈);《経脈篇》「上膈」「從胃別上膈」
➣ 手少陰心 (経脈);《経脈篇》「下膈絡小腸」
➣ 手太陽小腸(経脈);《経脈篇》「循咽下膈」
➣ 足少陰腎 (経脈);《経脈篇》「從腎上貫肝膈」
➣ 手厥陰心主(経脈);《経脈篇》「下膈歷絡三膲」
➣ 手少陽三焦(経脈);《経脈篇》「下膈」
➣ 足少陽胆 (経脈);《経脈篇》「以下胸中貫膈」
➣ 足厥陰肝 (経脈);《経脈篇》「上貫膈」「從肝別貫膈」

◆奇経
➣ 陰維脈:「上胸膈挟咽」(『奇経八脈攷』)

足太陽膀胱経の他の経脈はみな膈となんらかの形で関与しています。しかし太陽膀胱経も「膈兪」という経穴を介して関与していると言えなくもないのでは?と思う次第。となると膈に関与しない経脈というのが存在しないわけです。

「膈を貫く」「膈に下る」「膈に上る」の表現(経脈流注を冷静に見れば一目瞭然ではあるが)とで、膈に対する経脈のベクトルが明確となります。この事がイメージできれば、単に“膈を開く”または“利膈”といった治療を行う際、経脈の選択や運用に幅が出るかもしれません。

臍とは言わずと知れた神闕です。

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」
◇正経
➣ 足陽明胃 (経脈);《経脈篇》「下挾臍」(※厳密には臍に直接関与していない)
➣ 足太陰脾 (経筋);《経筋篇》「上腹結於臍」
➣ 手少陰心 (経筋);《経筋篇》「下繋於臍」

◆奇経
➣ 督脈:別絡「督脈別絡……貫臍中央」(『奇経八脈攷』)
➣ 任脈:循神闕(臍中央)       (『奇経八脈攷』)
➣ 衝脈:「侠臍左右各五分」(※厳密には臍に直接関与していない)(『奇経八脈攷』)
➣ 帯脈:「張子和曰……循腹脇、夾臍旁、傳流於氣衝、属於帯脉、絡於督脉。」
※張子和の説として、臍旁を挟み氣衝部に流れることを引用付記している。(『奇経八脈攷』帯脈為病)

臍にまつわる経に脾経・心経があります。

神闕は中焦と下焦を分けつつ、両者を含む部位であり経穴でもあります。その故、神闕へのお灸(塩灸などの隔物灸)は下痢・腹痛・腹冷・霍乱などの病症に効果があります。

神闕には下焦(主に腎経)の関与こそありませんが、胞中を起源とする任督衝三脈の関与が神闕にある点に注目です。

陰器

陰器とは陰部・生殖器のことです。これら知識も性医学・婦人科・不妊治療などに必要な知識であることは言うまでもありません。(もちろんそれら分野に限ったものではないが)

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 足陽明胃 (経筋)   ;《経筋篇》「聚於陰器」
➣ 足太陰脾 (経筋)   ;《経筋篇》「聚於陰器」
➣ 足少陰腎 (経筋)   ;《経筋篇》「結於陰器」
➣ 足厥陰肝 (経脈・経筋);《経脈篇》「過陰器」《経筋篇》「結於陰器」

◆奇経
➣ 督脈:「男子循莖下仍簒。女子絡陰器」(『奇経八脈攷』)
➣ 陰蹻脈:「直上循陰股入陰」(『奇経八脈攷』)
※陰器とは明記していないが「陰股を循り陰に入る」という文脈から陰部(陰器)に流入することが推測される。

附:毛際・足少陽胆 経脈・経別:《経脈篇》「繞毛際」《経別篇》「入毛際」
➣ 足厥陰肝 経別   :《経別篇》「上至毛際」・任脈  「上毛際、至中極」

足厥陰肝経が陰器を過ぎることはよく知られていますが、さらに胃経・脾経・腎経が陰器に関与することはあまり知られていないように思います。この肝経・腎経・脾経・胃経の関与は三結交(関元)を彷彿させます。
また「過」「聚」「結」の表現もよくイメージしておくべきでしょう。

また毛際(陰毛際)についても付記しておきます。陰器周囲に生ずる陰毛、その際にて肝経と胆経の両経が合流している情報は併せて知っておくべき経脈構造だといえるでしょう。

舌に関する情報も重要です。舌といえば心の苗であることは五行分類で暗記する人も多いでしょう。しかし臨床家ならば、さらに経脈流注の観点からも舌の構造を知る必要があります。

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 足太陰脾 (経脈・経別);《経脈篇》「連舌本」「散舌下」《経別篇》「貫舌中」
➣ 手少陰心 (別絡)   ;《経脈篇》「繋舌本」
➣ 足太陽膀胱(経筋)   ;《経筋篇》「別入結於舌本」
➣ 足少陰腎 (経脈・経別);《経脈篇》「挾舌本」《経別篇》「繋舌本」
➣ 手少陽三焦(経筋)   ;《経筋篇》「入繋舌本」
➣ 足厥陰肝 「筋者、聚於陰氣(陰器?)而脈絡於舌本也」《経脈篇》の記載あり。
(※流注の情報ではなく末期症状に関する情報であろう)

◆奇経
➣ 督脈:「入繋舌本」(『奇経八脈攷』)

経脈流注では脾経が「舌本に連なり、舌下に散ずる」こと、腎経が「舌本を挟む」ことはよく知られた情報だと思います。
加えて、督脈・脾経の経別・心経の別絡・腎経の経別・足太陽の経筋・手少陽の経筋などが舌に関わります。

舌の異常は、舌診所見・口内炎・味覚障害・脳血管性障害(言語障害など)・末期の舌萎縮…まで軽重の幅が広いです。それだけに上記のような舌と経の立体的な構造を理解しておく必要があります。

ちなみに督脈と舌の関わるポイントはどこから?かというと、瘂門と風府の間から“入りて舌本に繋がる”とのこと。

咽は口腔の奥から食道に続くルート上にあります。七衝門のひとつ・吸門もこのルート上にあります。

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 足陽明胃 (経別)   ;《経別篇》「上循咽」
➣ 足太陰脾 (経脈・経別);《経脈篇》「挾咽」《経別篇》「上結於咽」
➣ 手少陰心 (経脈)   ;《経脈篇》「上挾咽」
➣ 手太陽小腸(経脈)   ;《経脈篇》「循咽下膈」
➣ 足少陽胆 (経別)   ;《経別篇》「以上挟咽」

◆奇経
➣ 任脈 :「會於咽喉」(※『十四経発揮』の記載、『奇経八脈攷』にはみられない)
➣ 衝脈 :「上行會於咽喉」  (『奇経八脈攷』)
➣ 陰蹻脈:「至咽嚨、交貫衝脉」(『奇経八脈攷』)
➣ 陰維脈:「上胸膈挟咽」   (『奇経八脈攷』)

咽は食道に続く部位であるだけに、脾経・胃経・小腸経・胆経など消化器に関する経脈・経別が通行しています。
また心経が通行している点も興味深いですね。単に消化器系経脈だけの関与ではないことが診断や治療の幅を広げてくれます。例えば梅核気(咽中炙肉)などの診断にも応用できることもあるかと思います。

喉は気道に続くルートです。呼吸器系疾患(咳嗽・喘急・喉痺・痰…)などの鑑別および治療に必須の情報であることは言うまでもありません。

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 手太陰肺 (経別)   ;《経別篇》「循喉嚨」
➣ 手陽明大腸(経別)   ;《経別篇》「上循喉嚨」
➣ 足陽明胃 (経脈・別絡);《経脈篇》「循喉嚨」「下絡喉嗌」
➣ 手少陰心 (経別)   ;《経別篇》「上走喉嚨」
➣ 足少陰腎 (経脈)   ;《経脈篇》「循喉嚨」
➣ 手厥陰心主(経別)   ;《経別篇》「出循喉嚨」
➣ 足厥陰肝 (経脈)   ;「循喉嚨之後」

◆奇経
➣ 督脈 :「督脈別絡……入喉上頤」(『奇経八脈攷』)
➣ 任脈 :「上喉嚨」        (『奇経八脈攷』)
➣ 衝脈 :「上行會於咽喉」     (『奇経八脈攷』)
※陰維脈の流注記載では「…與任脉會於天突廉泉…〔天突在結喉下四寸半宛宛中、廉泉在結喉上二寸中央是穴〕」と結喉部付近で陰維と任脈が会している。

以上のように、咽と喉に関わる経の詳細は知っておくべきでしょう。

臨床において咽喉に関する病症は頻繁に遭遇するものではないのかもしれません。が、痰や咽喉の腫れ・痛み・詰まり・いがらしい(地方によっては“はし痒い”)等々の症状や訴えは日常にありふれたものでもあります。それだけに鑑別の材料(情報・知識)を増やしておく必要があります。

目系

目系とは“眼と脳をつなぐ系”を指します。厥陰肝経の流注が「目系に連なる」ことは知られています。肝経以外の流注も必知の情報です。

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 足陽明胃 (経別)   ;《経別篇》「環繋目系」
➣ 手少陰心 (経脈・別絡);《経脈篇》「繋目系」「屬目系」
➣ 足厥陰肝 (経脈)   ;《経脈篇》「連目系」
➣ 足少陽胆 (経別)   :《経別篇》「繋目係」
➣ 足太陽膀胱(経脈)   :《寒熱病篇》「足太陽、有通項入於脳者、正属目本、名曰眼系」

眼と脳をつなぐ系、現代でいう視神経の疾患を扱う鍼灸院は多くないかもしれません。しかし視神経という縛りを除けば、網膜の疾患や異変にも応用できる情報でもあると思います。

他に臨床で比較的多くみられる訴えとして、眼球裏・目の奥の痛みは目系に関わるものと見てよいでしょう。

脳は別名「髄海」、四海のひとつです。

 [主経名] (経の種類):《出典篇》「記載文」

◇正経
➣ 足太陽膀胱(経脈);《経脈篇》「其直者、從巓入絡脳」
➣ 足太陽膀胱(経脈):《寒熱病篇》「足太陽、有通項入於脳者、正属目本、名曰眼系」

◆奇経
➣ 督脈:「督脈別絡……入絡於脳。又別自脳下項」(『奇経八脈攷』)
➣ 蹻脈:《寒熱病篇》「入脳乃別陰蹻陽蹻、陰陽相交、陽入陰、陰出陽、交於目鋭眥」

脳(大脳・小脳・脳幹部)と脊髄を中枢神経系となす現代の人体観を知る我々だからこそ、伝統医学における脳の役割りや脳に関する連絡経路を知っておくことは必須だといえます。
中学生物で習う脊椎動物の発生を考えれば、神経管の末端に脳が形成される過程は督脈と脳(髄海)との関係は現代人の我々でもイメージしやすいのではないでしょうか。
(もちろん現代医学における脳と伝統医学における脳とを同一視してはいけませんが)

さて脳に関わる経脈は督脈だけではありません。足太陽膀胱経と脳の関係も須知の情報でしょう。とくに『霊枢』経脈篇と寒熱病篇、両篇の内容を採用するならば、太陽膀胱経がもつ脳の流入ポイントは二カ所あります。
ひとつは「巓」もうひとつは「項」です
「項」は足太陽膀胱経の流行上にありますが、「巓(※)」は督脈上にあります。(※巓を百会とみなすならば)
督脈上の百会を通り、督脈と足太陽膀胱経の脈気が流入している構造が推察できます。

寒熱病篇の内容は実に興味深いものがあります。目本(眼系・目系)と太陽膀胱経の関係は明示しつつも、具体的な目系への膀胱経流注は触れておりません。しかし、太陽膀胱経と脳と目の密接な関係は示しており、かつ脳を介して陰陽の二蹻脈が目内眥にて交わることをを示しています。二蹻脈が目内眥に交会することは『奇経八脈攷』にも記されていますが、「脳に入りて乃ち陰蹻陽蹻に別れ…目の内眥に交わる」の記載は『奇経八脈攷』では確認できません。

陽蹻脈は足太陽膀胱経の別脈です。この膀胱経と陽蹻脈・陰蹻脈さらに脳と目の関係を理解しておくことは診断や治療だけでなく。経脈を基盤とした身体観・生命観を構築する上で非常に重要な情報です。

参考記事:「陰陽蹻脈が構築する小循環」

さて以上のように人体の要所と諸経との関係をピックアップしましたが、まだ漏れている情報もあるかと思います。鍼灸治療を行う方はぜひ自身の経脈人体観を構築してください。

鍼道五経会 足立繁久

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