鍼道五経会の足立です。
治療方針はどうあるべき?
以前の勉強会で実技指導をしていて思ったことなのですが、
鍼の刺激や補瀉の使い分けって、その人の好みが反映されるようですね。
「私は強い刺激が苦手だから、強い鍼はできません。」
「強刺激を受けて自分がしんどくなったので、強い鍼はドーゼオーバーです。」
このような言葉を聞いたことが度々あります。
個人の印象や体験で治療方針を決定するのはどうか…とその時は思ったものです。
ま、その時はそれほど強く指導できなかったんですけどね(笑)
しかし、この時の体験も私にとっては良い勉強になりました。
基本的に繊細な虚証タイプの人は瀉法をしたがらない傾向が強いようです…と私は感じています。
虚タイプの人は瀉法することに強い抵抗を感じますよね。
しかし、よく考えてほしいのです。
「自分は虚だから相手にも瀉法をしない」というのは基本的に大間違いです。
もちろん逆も然りです。
もしそれが通るなら「自分が虚なら相手も虚である」という話になります。
「己の欲せざるところ、人に施すなかれ(己所不欲、勿施於人而)」とはまた違う話なのです。
切診の特性からもわかる判断の偏り
治療の考え方と同じように切診にもこのタイプ別が見られます。
実タイプの人は、人の体に触れる際のファーストタッチは強めになります。
特に未熟な間は粗雑な触り方になりやすいです。
経穴の反応を探るにも、浅層の虚を一気に貫通して深層の実に指を持っていくことが多いです。
ですから指先で見つける反応はどうしても実邪・硬結が多くなります。
虚タイプの人も同様です。
ソフトタッチが過ぎて、虚の反応を捕まえるのは上手ですが、深層の実邪に届かないことが多いです。
当然、触知できる所見は虚の情報に偏ります。
『強く押すと痛がられるんじゃないか(怖い)…』と考えるようですね。
しかし、得られる情報が虚に偏ると、治療方針も自ずと補法に偏り、
瀉法を選択する機会は減ります。
ここは瀉法に打って出るべき!とアドバイスしても、
結局 補法を選んでしまうんですよね。
実タイプの人はその逆で、虚の所見をこちらが提示しても、
いざ治療になると瀉法を選んでしまう…。
自分とは違うタイプの姿を知る
治療家として、得手不得手(いわゆる得意技)や各々のポリシーがあるのは良いのです。
それは自分の特性を知っている上での判断ですから。
気を付けて欲しいのは、印象や思い込み、偏った情報で治療方針を決定してしまうことです。
そういった意味で、以前の勉強会での皆さんの悩みは私にとっては非常に勉強になりましたね。
私自身は初期のころは補法を選ぶ傾向が強いタイプでした。
今は瀉ありきの治療を主としていますが、それだけに虚タイプの人の気持ちもわかりますし、
治療の悩みどころもわかるつもりです。
大事なのは、自分のタイプを客観的に知るということです。
…と、今回は過去を振り返っての自他ともに戒め記事でありました。