小児の脈『診家枢要』より

小児の脈の時間です

小児の脈法

小児三歳以下は、虎口三関の紋色を看よ。
紫は熱、紅は傷寒、青は驚風、白は疳病。
惟だ黄色の隠隠として、或いは淡紅の隠隠とするは、常候と為す也。
黒色を見(あらわ)すときは則ち危に至る。
その他の紋色、風関に在るときは軽と為し、氣関は漸く重く、命関は尤も重き也。

三歳以上に及びては、乃ち一指を以って三関を按ず。(寸関尺を三関と為す)
常は六七至を以って率と為す。
添うときは則ち熱と為し、減ずるときは則ち寒と為す。

若し脈が浮数なれば乳癇、風熱、或いは五藏の壅を為す。
虚濡は驚風を為し、緊実は風癇を為し、緊弦は腹痛を為し、弦急は氣不和を為し、牢実は便秘を為し、沈細は冷を為す。
大小匀ずは祟脈。或いは小、或いは緩、或いは沈、或いは細、みな宿食不消と為す。

脈乱れて身熱し、汗出で食せず、食して即吐するは、変蒸を為す也。
浮は風を為し、伏結は物聚るを為し、単細は疳勞を為す。

小児、但だ憎寒壮熱を見(あらわ)せば、即ち須らく曽て斑疹を発したか否かを問うべし。これ大法也。

小児科の内容をかなりコンパクトにまとめてくれています。
小児はりを実践するならば、この内容を(覚えるのではなく)理解することは最低限必要かと思います。

また「変蒸」という言葉は見慣れないと思いますが、東洋医学独特の小児の生理に関わるものです。小児はりを実践する者はやはり学び理解しておくべきでしょう。診断や治療にも影響します。

小児脈診といえば虎口三関

小児はりに力を入れていた頃、虎口三関の脈紋を意欲的に診ていた時期がありました。
※虎口三関の脈とは人差し指の指腹に現われる血管=脈紋をみる診法です。そのうち何か虎口三関関係の記事を書くかもしれません。

虎口三関の診かたはただみるのではなく、ひと手間必要です。
それと、ただ色を視るのではなく、色の明瞭不明瞭や濃淡や層を診ることで診断に使うことができます。この点についての記述がしっかりしているのは清代の『幼幼集成』(陳復正 著)が印象に残っています。

さて虎口三関について、ですがこれは厳密にいうと脈診ではありません。望診ですね。
小児科なので、望診が適しているのです。それは何故か?診鍼一貫の考えでみると『そりゃそうだ』となるのです。

他にも一指脈診など、小児の生理に合わせた診法が考案され伝えられています。ですが、長くなるのでこの辺で割愛します。

小児の脈から分かること

そして脈診になりますと、小児の平脈は六七至になります。
この脈数は大人であれば熱病ですが、小児であれば熱の所見ではありません。

なぜか?

ここが脈数はただの寒熱を判定する指標ではないということです。数脈記事のクイズ「恋のドキドキ数脈は熱証なのか?」と、あわせて考えてみると面白いと思います。

小児科なので痘瘡の問診も

最後の文「子どもが悪寒、高熱を発した時に、まず問診すべきことは『この子は以前に斑疹を起こしたことがあるのか?』ココ大事だからね!」という内容。

これは痘瘡(天然痘)の既往歴を確認しています。
天然痘に罹ると終生免疫を獲得しますので、天然痘に罹ったことがあるのかどうか?は非常に重要な情報なのです。

免疫を獲得しているかどうか?は病疫の軽重や治療法を決める情報にもなり大事なことなのですが、なによりもパンデミックを起こさない措置を迅速にとることができます。

天然痘の可能性が僅かでもあれば、速やかに隔離して療養するべき…ということは、新型コロナ感染症による2020-2021年の現状をみれば疑う余地はないですね。

ジブリ絵から学ぶ小児脈診

イラストa、『崖の上のポニョ』の洪水後に出てくる大泣き赤ちゃん。制作サイドはこの大泣き赤ちゃんにもメッセージをこめて描いていたとのこと。

※以上のイラストはスタジオジブリの作品静止画より引用させていただきました。

東洋医学の小児科☆クエスチョン

【初級者向けの課題】
大泣きしているときの脈はどのような脈だろうか?
たとえアニメのイラストであってもシミュレートすることは勉強になるものです。

【中級者向けの課題】
この絵の赤ちゃんには望診所見のヒントも描かれている。どの部位に熱がこもっているのか?
そしてその部位の熱は大泣きに関与している熱なのか?シミュレートしてみよう。

【上級者向けの課題】
大泣き赤ちゃんが鼻水を出している。これも赤ちゃんの特徴をよく描いてくれている。
『赤ちゃんが泣くとなぜこんなに鼻水が出てくるのだろうか?』考えてみよう。
※補足、大人も泣くと鼻水は垂れてくるものだが、乳幼児とはちょっと違う。小児と大人の体質の決定的な違いについて変蒸を元に考察しよう!

 

 

鍼道五経会 足立繁久

以下に原文を付記しておきます。

■原文 小兒脉

小兒三歳以下、看虎口三関紋色、紫熱、紅傷寒、青驚風、白疳病。惟黄色隠隠、或淡紅隠隠、為常候也。
至見黒色、則危矣。
其他紋色、在風関為軽、氣関漸重、命関尤重也。
及三歳以上、乃以一指按三関、(寸関尺為三関)
常以六七至為率、添則為熱、減則為寒。
若脉浮数、為乳癇風熱或五藏壅、虚濡為驚風、緊實為風癇、緊弦為腹痛、弦急為氣不和、牢實為便秘、沈細為冷、大小不均祟脉、或小或緩或沈或細、皆為宿食不消。
脉乱身熱、汗出不食、食即吐、為變蒸也。
浮為風、伏結為物聚、単細為疳勞。
小兒但見憎寒壮熱、即須問曾発斑疹否、此大法也。

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