虚脈とは『瀕湖脈学』より

虚系の脈で大事なこと

虚脈です。
虚系の脈には虚脈、微脈、弱脈、濡脈、細脈、芤脈…などなどありますが、これらの違いを整理しておくことは大事です。
くどいようですが一番重要なことは、脈象と脈理を照らし合わせて何が虚しているのか？を整理することです。
そうすれば治療の優先順位が自ずと分かるのです。

脈の名前や病症を覚えることではありません。

※『瀕湖脈学』（『重刊本草綱目』内に収録）京都大学付属図書館より引用させていただきました
※下記の黄色枠部分が『瀕湖脈学』の書き下し文、記事末青枠内に原文を引用しています。

脈の要素・脈力から分析する

按じて無力、指で脈を探ってもすっからかん…な脈が虚脈です。

気血の盛衰を診るには脈力や脈幅で整理します。当会で脈診を5つの要素に分けています。脈位・脈力・脈状・脈数・脈機ですが、脈幅は脈力の中に含みます。

そして虚の脈を分類するには、単純な二軸グラフに整理してみると良いでしょう。日本酒やワインの味の分類表みたなアレです。
横軸は「太い－細い」、縦軸は「強い－弱い」の二軸です。（縦軸横軸はどちらでも良い）
虚系の脈は脈力の弱いもしくは細いに属します。
そして、この虚脈は「脈力は弱く・脈幅は太い脈状」に類します。
この情報から陰陽や気血の状態や症状の新旧急慢を推し測ることができるのです。

ちなみに【主病詩】の神門の両部とは『脈経』の神門、すなわち関後一分のことだと考えます。

但し類似脈に注意！

虚脈に似ているのものに、芤脈や散脈があります。逆にいうと、微脈や細脈は除外ということです。
イメージしにくい脈状は対比することがポイントです。

似ている脈状を列挙することでその脈の系統が分かり、似てない脈状群を整理し対比させることで互いの脈象や脈理が推理推測しやすくなります。

【体状相類詩】から虚脈と芤脈とは、その形状も証も似ています。
『脱血と血虚ってどう違うね～ん！？』と思う人もいることでしょう。
しかし、先達が伝えたいのはそこではありません（と、思うのです）。
脱血と血虚という言葉から、状態の進行度合いが分かります。となると症状の新旧急慢、そして気血の損耗度を類推することができるのです。

となると、同じ血虚の脈でも濇脈と虚脈の違いもわかることでしょう。

クイズ☆血虚の脈を考えよう！

Q1，〔濇脈・芤脈・虚脈〕を血虚の性質を持つ脈状として挙げたが、上記の文意から考察して、急性期から慢性期（証の新旧・浅深）の順に各脈を並びかえよ。

a；〔芤脈→濇脈→虚脈〕
b；〔濇脈→芤脈→虚脈〕
c；〔芤脈→虚脈→濇脈〕
d；〔虚脈→濇脈→芤脈〕
e；〔濇脈→虚脈→芤脈〕
f；〔虚脈→芤脈→濇脈〕

以上の６つから答えを一つ選んでみましょう。
難易度（★★☆☆☆）

Q2，以上、3つの脈における氣と血のバランス（盛衰）や方向性はどのような状態になっているでしょうか？
難易度（★★★☆☆）

鍼道五経会　足立繁久

以下に原文を付記しておきます。