浮脈とは『診家枢要』より

いよいよ脈状に入ります。『診家枢要』に記される脈状の数は30種。
まずは浮脈からスタートです。

脈の形状・性質・各部位における病症

浮脈の形状、浮脈の全体的な性質・特性、そして各部位における病症といった形式で解説が成されています。

脈の陰陽類成
浮脈は沈ならず也。これを按じて不足し、軽く挙して有余し、指に満ちて浮上するを、浮と曰う。
風と為し、虚動の候とす。
脹と為し、風と為し、痁と為し、満して不食と為し、表熱と為し、喘と為す。浮大は傷風鼻塞、浮滑にして疾は宿食と為し、浮滑は飲と為す。左寸口の浮は、傷風、発熱、頭疼、目眩及び風痰を為す。
浮にして虚遅は、心氣不足、心神不安。
浮散の脈は、心氣耗し、虚煩とす。
浮にして洪数は、心経熱す。左関上の浮は、腹脹。
浮にして数は、風熱が肝経に入る。
浮にして促は、怒氣が肝を傷る、心胸逆満す。左尺中の浮は、膀胱風熱、小便赤く渋る。
浮にして芤は、男性であれば小便血、婦人であれば崩帯す。
浮にして遅は、冷疝臍下痛む。右寸口の浮は、肺が風寒に感じて、咳喘清涕、自汗し体倦む。
浮にして洪は、肺熱して咳す。
浮にして遅は、肺寒えて喘嗽す。右関上の浮は、脾虚、中満して食せず。
浮大にして濇は、宿食と為す。
浮にして遅は、脾胃虚す。右尺中の浮は、風邪が下焦に客す、大便秘す。
浮にして虚は、元氣不足す。
浮にして数は、下焦風熱、大便秘す。

浮脈とは沈ならず、按じて不足、軽挙して有余という特徴が分かりやすいですね。

飛行石にみる浮脈のイメージ


写真はスタジオジブリの作品静止画『天空の城ラピュタ』より
このシーンでは“飛行石”を持つシーター嬢が落下下降してきた際、パズーが受け止めようとします。
この時、パズーの手にすぐに触れずにフワフワ浮いていましたね。
そのイメージが「按じて無力、軽挙して有余」の浮脈の形容に近いのではないでしょうか(少し無理があるかな…汗)

浮脈は皮毛まで浮く脈なのか?

浮脈は“軽く取ることで得られる脈”を言い、難経五難の菽法脈イメージと一緒にされているのか「浮脈は皮毛にまで浮く脈」としてイメージされていることが多いと思います。しかし、その浮脈イメージには個人的に抵抗を感じます。
浮脈には病脈としての浮脈と脈位としての浮脈があり、それを使い分ける必要がありますね。
例えば、肥痩によって平脈が異なるという教えもあるように、機械的に皮毛と骨の間隔だけで浮沈を測るものではないのです。

脈状と病症の関係はどうあるべき

浮脈とは人体のどのような状態を示しているのか?という観点でもって浮脈を理解することで、なぜ浮脈が上記の各病症を示すのかが分かることでしょう。
ちなみに各部位と病症の相関関係については丸暗記することはおススメしません。
反対に各部位と病症の関係や病理について考察することは勉強になります。思考停止に陥らず、いろいろと考えることです。

鍼道五経会 足立繁久

■原文 脉陰陽類成 浮脉

浮。
不沈也。按之不足、軽挙有餘、満指浮上、曰浮、為風、虚動之候。

為脹、為風、為痁、為満不食、為表熱、為喘。

浮大傷風鼻塞、浮滑疾為宿食、浮滑為飲。
左寸浮、主傷風、発熱、頭疼、目眩及風痰。
浮而虚遅、心氣不足、心神不安。
浮散、心氣耗、虚煩。
浮而洪数、心経熱。

関浮、腹脹。浮而数、風熱入肝経。
浮而促、怒氣傷肝、心胸逆満。

尺浮、膀胱風熱、小便赤澀。
浮而芤、男子小便血、婦人崩帯。
浮而遅、冷疝臍下痛。

右寸浮、肺感風寒、咳喘清涕、自汗体倦。
浮而洪、肺熱而咳。
浮而遅、肺寒喘嗽。

関浮、脾虚、中満不食。浮大而澀、為宿食。浮而遅、脾胃虚。

尺浮、風邪客下焦、大便秘。浮而虚、元氣不足。浮而数、下焦風熱、大便秘。
(諸脉指下真形與其主病、倶少所発明、読者当以意測之、推見其本、乃為有得。)

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