散脈とは『診家枢要』より

散脈は集まらない脈

脈の陰陽類成 散

散、聚らず也。
陽有りて陰無し。これを按じて指に満ち、散じて聚らず。来去不明、漫にして根柢無し。

気血耗散、府藏氣絶と為す。
病脈に在りて、陰陽(※)斂せざるを主る。(※虚陽の説あり)
又、心気不足を主る。
大抵は佳脈に非ざる也。

「陽有りて陰無し」「散じて聚らず」という表現がとても分かりやすいです。

散じるので陽は有る…しかし、聚らないので陰は無しです。
となれば、当然「根柢なし」です。

そして根が無いのですから佳脈ではないのもやはり当然なのです。

※の部分は「陰陽斂せざる」と「虚陽斂せざる」の両つの記述パターンがありますが、文脈や病理からみて虚陽が収斂できない(虚陽不斂)が正しいのではないでしょうか。

また散脈の病症のひとつに心氣不足がありますが、私の中での経験ですが…
親友を交通事故で亡くしたばかりの女の子(小学低学年)がこのような“ちりぢりな脈”(散脈)をあらわしていたことが記憶に残っています。
かれこれ10年ほど前のことですが、この時『これが散脈かっ!?』と新しい脈を知った感動と、その子の事情・心情を思うと、申し訳ないような…悲しいような…なんとも言えない気持ちになった記憶です。

悪い脈を知るということは、患者さんが辛い出来事に見舞われたということですから。自分の技術・技量の上達向上の礎には、そういった条件や出来事があることを忘れてはいけないなと思った次第です。
やはり臨床家は謙虚な気持ちを常に心のどこかに置いておかなければいけません。

ジブリ絵から散脈をイメージしよう!

イラストa、散る・散らせるといえばこのイラスト。

ハクがカエル(青蛙という名らしい)に紙(神?またはウロコという説あり)を吹き付けるシーン。

『瀕湖脈学』では散脈を表わすフレーズに「楊花の散漫して飛ぶに似たり」とあるのが、この映像にもマッチするのではないだろうか。
但し、このイメージだけでは散脈の「散而不聚」の様を実感できるシーンはコチラ。

 
子どもを知る方なら「散じて聚まらず」のタイヘンさがよく分かると思う。
ましてや、一旦 ↑↑↑ のイラストのような状態になると、まったく収拾がつかない。

想像してもらいたい。
イラストの子どもたちのように、気血水がてんでバラバラに散ってしまい、術者がいかに必死にかき集めようとも何一つ集まらない…手に残らない…
事態はいかに絶望的であるのか…容易に想像できるだろう。


氣血水の毎日の営みはこうあるべきだ…ウムウム。ポルコは○○氣ですね。

※スタジオジブリの作品静止画『紅の豚』より使用させていただきました。

鍼道五経会 足立繁久

以下に原文を付記しておきます。

■原文 脉陰陽類成 散

散、不聚也。
有陽無陰。按之満指、散而不聚。来去不明、漫無根柢。

為氣血耗散、府藏氣絶。
在病脉、主陰陽不斂。
又主心氣不足。
大抵非佳脉也。

おすすめ記事

  • Pocket
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す




Menu

HOME

TOP