11月で学ぶ難経鍼法の予習範囲【医書五経を読む】

【医書五経を読む】では医書から鍼法へ、座学から実践へ

11月の講座【医書五経を読む】では難経鍼法を学びます。

これまでは「『霊枢』から学ぶ鍼と氣」と題して『霊枢』の鍼法記載から気を理解することを学んでおりました。
ここ最近は同様の学び方で『難経』に記載されている鍼法から鍼と氣を学ぶこともしばしばです。

難経鍼法といえば、難経七十難~七十四難です。
そしてそれら鍼法を理解するためには難経に記される衛気栄気を理解せねばなりません。
この栄衛に関する記載に関しては三十難そして三十一難・三十二難にて学びます。
またもう一つの経穴システムとして詳解しているのが三十六難・三十八難・三十九難。
そして複数の経穴システムについて系統的に学ぶのが六十二難~六十八難。
そして有名な補瀉法を論じる六十九難は以上の生理学鍼法理論をベースにした一技法に過ぎないと個人的には考えています。

と、このように医書を読むことで当時の人体観を学び、それを構築することが必須となります。
当講座【医書五経を読む】はこのようなスタンスで、医書から鍼法へ、座学から実践へと学びを深めています。

さて11月の予習の範囲はコチラ!

難経鍼法Finalということで難経七十六難・七十八難・七十九難・八十難です。

難経 七十六難の書き下し文

書き下し文・難経七十六難

七十六難に曰く、何を補瀉と謂う?
当に補するべき時、何れの所の気を取るか?
瀉するべきの時は、何れの所に気を置くのか?

然り。
当に之を補するべき時は、衛より気を取る。
当に之を瀉するべき時は、栄より気を置く。
その陽気不足、陰気有余するは、当に先にその陽を補い、而る後にその陰を瀉すべし。
陰気不足陽気有余するは、当に先にその陰を補い、而る後にその陽を瀉すべし。

栄衛通行、これその要也。

ちなみに七十六難原文を以下の青枠に転載します。
原文になるとさらに文字量が少なくコンパクトですね。
読むこと自体は苦にならない文量です。しかしこのコンパクトな文の中に噛みしめるべき深い内容が込められているのです。

原文 難経 七十六難

■原文 難経 七十六難

七十六難曰、何謂補瀉。當補之時、何所取氣。當瀉之時、何所置氣。

然。
當補之時、従衛取氣。當瀉之時、従榮置氣。
其陽氣不足陰氣有餘、當先補其陽、而後瀉其陰。
陰氣不足陽氣有餘、當先補其陰、而後瀉其陽。

榮衛通行、此其要也。

そして次なる難経鍼法として七十八難を以下に付記します。

難経 七十八難の書き下し文

書き下し文・難経七十八難

七十八難に曰く、鍼に補瀉あり、何の謂い也。
然り、
補瀉の法、必ずしも呼吸出内の鍼に非ざる也。
鍼を為すことを知る者、その左を信ず。
鍼を為すことを知らざる者、その右を信ずる。
當に刺すべきの時、先ず左手で以て鍼する所の栄兪の処を厭按し、弾してこれを努し、爪してこれを下す。
その氣の来たること動脈の状の如し、鍼を順じてこれを刺す。
氣を得て因りて推して之を内れる、是を補と謂う。動じてこれを伸ばす、是を瀉と謂う。
氣を得ざれば乃ち男は外、女は内を與う。
氣を得ざるは是、十死不治と謂う也。

七十八難原文を以下の青枠に転載します。

原文 難経 七十八難

■原文 難経 七十八難

七十八曰、鍼有補瀉、何謂也。
然、
補瀉之法、非必呼吸出内鍼也。
知為鍼者、信其左。
不知為鍼者、信其右。
當刺之時、先以左手厭按所鍼栄兪之處、弾而努之、爪而下之。
其氣之来如動脉之状、順鍼而刺之、得氣因推而内之。是謂補。動而伸之、是謂瀉。
不得氣乃與男外女内、不得氣是謂十死不治也。

続いて七十九難の鍼法記載が以下になります。
どうでしょう、そろそろお腹いっぱいになっていませんか?

難経 七十九難の書き下し文

書き下し文・難経七十九難

七十九難に曰く、経に言う迎えてこれを奪う、安んぞ虚する無きを得ん。随いてこれを済う、安んぞ実する無きことを得ん。
虚と実は、得るが若く失うが若し。実と虚は、有るが若し無きが若しとは、何の謂い也?

然り。
迎えてこれを奪うとは、その子を瀉する也。
随いてこれを済うとはその母を補う也。

假令(たとえば)心病みて、手心主の兪を瀉するは、是れ迎えてこれを奪う者を謂う也。
手心主の井を補うは、是れ随いてこれを済う者を謂う也。

所謂(いわゆる)実と虚とは、牢濡の意なり。気来たりて実牢なる者は得るとを為す。濡虚なる者は失うとを為す。
故に曰く、得るが若く失うが若く也と。

以下に七十九難の原文です

原文 難経 七十九難

■原文 難経 七十九難

七十九難曰、經言迎而奪之、安得無虚。隨而濟之、安得無實。
虚之與實、若得若失。實之與虚、若有若無、何謂也。

然。
迎而奪之者、瀉其子也。隨而濟之者、補其母也。

假令心病、瀉手心主兪。是謂迎而奪之者也。
補手心主井、是謂隨而濟之者也。

所謂實之與虚者、牢濡之意也。
氣来實牢者為得濡。虚者為失。故曰若得若失也。

そして鍼法記載の最後にあたる八十難です。しっかり目を通して、そして考えておいてください。
考えることが重要であり、そして楽しいものなのです。

難経 八十難の書き下し文

書き下し文・難経八十難

八十難に曰く、経に言う、見ること有りて如(しこうして)入る、見ること有りて如(しこうして)出だすとは、何の謂い也?

然り。
所謂(いわゆる)有見如入とは、左手に気の来たり至るを見て、乃ち鍼を内れることを謂う。鍼を入りて気の尽きるを見て乃ち鍼を出だす。
是れ「有見如入」「有見如出」と謂う也。

八十難の原文に以下に付記します。

原文 難経 八十難

■原文 難経 八十難

八十難曰、經言、有見如入、有見如出者、何謂也。

然。
所謂有見如入者、謂左手見氣来至、乃内針。針入見氣盡、乃出針。是謂、有見如入、有見如出也。

予習のしかた

どうでしょう?
ここまで目を通すことができましたね。

予習の目安を書いておきますね。

まずは「何が書かれてあるか?」を把握すること。
ですが、これをクリアするにはさほど難しくありません。

最低限やっておくべきこと・予習その1

そのために最低限必要なのはわからない単語の意味を調べること。
意味不明な単語が一つでもあると、その文すべてが意味不明になります。そしてある文章を意味不明だと認識するだけで、その章やその書物そのものを意味不明なものと認識しがちです。
いわゆる脳のバグとしての結果なのかもしれません。

ということで、予習の第一段階は「分からない単語は調べておく」をクリアしておくことです。
これをクリアしておくだけでも、受講したときの理解度や思考のスムースさが断然違います。
要は脳をいかにバグらせないように下準備するか?が大事です。

予習その2・考えること『なぜだろう・なぜかしら』

次にやるべきことは「考えること」です。

『筆者はなぜこのようなことを記したのか?』
『この章と他の章との関連はないのか?』
『なぜこの言葉や文字を選んだのか?』
『なぜこの順番なのか?』

…などなど、『なぜ?』という観点で文章をみると、文の背景をうかがい易くなります。
いわゆる「行間を読む」ですね。

予習その3・先輩の意見を参考にする

先輩、すなわち先人のご意見を参考にさせていただくことも重要です。
なぜなら、先人の方が断然、古医典を研究されているからです。その純度は現代に生きる我々の比ではないでしょう。ですので、当サイトは古典文献の紹介ばかりしています。

難経の注釈書も中国・日本の名医たちがたくさん記し残してくれています。それらの書から存分に学ぶべきでしょう。これら難経註釈書も難経記事の後半にできるだけ紹介とリンクをするようにしています。(とくに最近の記事でいえば六十二難・六十六難・六十八難の記事にて)

余談ながら、古典文献を読むとなると、先に先輩から答えをいただきたくなるものです。
『予習その2とその3を逆にした方が良いのでは???』と、思う方もいるでしょう。

初心のうちだと『現代語訳ではどのように書いているのか?』と気になって仕方がないとお察しします。
『その気持ちも分かるし、致し方ないですね…』とも思えるのですが、これは癖になりますので、あまりお勧めしません。
(動物も含め)人間というのは初めに見たものを基準と認識しますので(インプリンティングというヤツですね)、現代語訳が基本となります。いつも思うのですが、基本はオリジナルの原文ですからね。
原文から現代語に翻訳される辞典である程度のズレが生じます。ここも知っておく必要がありますね。

…と、予習のヒントは他にも色々ありますが、あまり沢山書くと逆にモチベDownになりますので、この辺で。

以上の難経鍼法が記載されている七十六難・七十八難・七十九難・八十難に関しては、11月の講座【医書五経を読む】にて解説します。

もしこの予習記事をみて興味を持たれた方はコチラからお申込みください。
初級~中級向けの内容ですので、鍼灸学生さんや臨床家ビギナーの先生方もウェルカムですよ。

以下のメールフォームからお申込みください。
※記入されたメールアドレスにメールが届かないケースが多発しています。複数の連絡先を記入しておいてください。

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医書五経を読むのセミナー情報

参加条件:鍼灸師・鍼灸学生・医療関係者で東洋医学を学ぶ意欲のある方

【日 時】:毎月第2日曜日 10:30~17:00
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【講 師】:足立繁久

 

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