脈診の三機(脈機)について

当会では脈診の指導に力を注いでいる。
当会独自の脈診法や運用法や練習法はいくつかある。(『脈診の先入観』を参照のこと)

この脈診三機もそのひとつ。

とはいえ、この「脈診三機」は2017年の日本伝統鍼灸学会(金沢大会)にて少し発表したものなので、秘密にしているわけではない。
もちろん、脈機も脈診三機も共に私の造語である。

写真:日本伝統鍼灸学会にて 中央に足立、写真左は座長を務めてくださった間 純一郎先生 

当会では「脈診の五要素」として、脈診を理解・習得しやすいように分類整理している。

1、脈数
2、脈位(脈形を含む)
3、脈力(脈幅を含む)
4、脈状
5、脈機(脈占を含む)

以上、5つの要素が脈診にはある。
1、脈数についてはの脈の遅数であり、一般的には寒熱を問う指標となっている。
しかし本来、脈数でみているのは正気の流れる速さである。
この場合の正気は経気・脈気と言い換えても良いだろう。

経脈の中を流れる速さが正常であれば平であり、早すぎても遅すぎても病なのだ。
その目安は一呼一吸で四至半(四~五至)とされている。
その気の流れの速さに異常をきたした結果、遅数となり、その遅数に寒熱が符合しているに過ぎない。

脈数でみているのは、まさしく人体の気と時間の関わりであり、実に奥が深い脈の要素なのだ。

2~4の脈位・脈力・脈状については「脈診の三要素」を参照されたし。
脈診三機は、5つめの要素「脈機」にあたる。

脈診とは診るタイミングによって、その情報の意味がまるで変ってしまうのだ。


脈の種類には二十四種または二十七種とも二十八種ともあると言われているが、
ひねくれた見方をすれば、その程度の脈種で千とも万ともいえる諸病症・病態を分析・診断できるのだろうか?

さらに言うと、一般鍼灸院の臨床現場ですべての脈状が確認できることも稀なことであろう。
私自身、診法の中では脈診にかなり信頼を置いているが、現場にて全ての脈を確認できているかというと、20を超えるほどの脈は確認できていない。
しかし、それで診断や治療に支障をきたすわけでもない。

「脈状はすべてを表わす」「脈診ですべて分かる」という言葉は少し語弊がある。
脈状を細やかに診れるようになることが脈診の完成ではなく、あくまでもステップの一つなのだ。

実際には脈診から得られる情報を、脈位・脈力・脈状に分類・整理することで診断を行っている。
ここにさらに脈機を加えるとより分析的な脈診になるのだ。

たとえば同じ脈状を触知したとしても、診る時・診るタイミングでその評価は異なる。

弦脈を例に挙げてみよう。

治療前と置鍼後に同じ弦脈が診られたとして、その意味は全く異なる。
(その微・甚や伴う他の脈状・現れる脈位によっても、当然診断が異なるが)

臨床で常々脈に触れている先生方ならご理解いただけると思うが、
「診察時に弦脈がみられる」のと
「置鍼後に弦脈が現れた」のとでは全く意味が異なるのだ。

脈診という診法を診断に結びつけるために必要な思考プロセスである。
当会ではその診断のための脈診三機を以下の条件として定義付けている。

①刺鍼後
②置鍼後
③抜鍼後

(刺鍼前に脈を診るのは当然のため、敢えて挙げていない)
それぞれのタイミング・機で脈を診ることに、それぞれの意味・目的があるのだ。

置鍼と単刺にもその違いがある。
その違いを理解することで、各脈機の意味も分かってくるだろう。

実際の現場では気口九道脈診、難経十八難脈診、脈形尺膚診…などを中心に、さらに我流の脈診を加えて5~6種の脈診法を組み合わせて用いている。
状況や病症に応じて(またはその時のマイブームによって)各脈法を取捨選択して脈診を行うが、脈機を外すことはない。
脈機には他にも解釈があるが、現在のところは未だ発表していないので、この辺りにて…。
鍼道五経会 足立繁久

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