『切脈一葦』脈状⑪-結脈・屋漏脈・代脈・散脈・解索脈-

『切脈一葦』これまでの内容

1、序文
2、総目
3、脈位
4、反関
5、平脈
6、胃氣
7、脈状その1〔浮・芤・蝦遊〕
8、脈状その2〔滑・洪〕
9、脈状その3〔数・促・雀啄〕
10、脈状その4〔弦・緊・革・牢・弾石〕
11、脈状その5〔実・長〕
12、脈状その6〔沈・伏〕
13、脈状その7〔濇・魚翔・釜沸〕
14、脈状その8〔遅・緩〕
15、脈状その9〔微・弱・軟・細〕
16、脈状その10〔虚・短〕


『切脈一葦』京都大学付属図書館より引用させていただきました

※下記の青枠部分が『切脈一葦』原文の書き下し文になります。

結 屋漏 代

結、停と同じ
結は緩脈の中に一止する脈を云う。一に停と云う。陽氣接続せざるの候なり。
又、病毒に痞塞せられて結脈を見わす者あり。
卒病に結脈を見わす者は病毒に痞塞せられる者多く、久病に結脈を見わす者は陽気接続せざる者多し。
又、積聚ある人、老人、或いは血液枯燥の人には常に見われる者あり。

屋漏は屋根の雨漏の地上に滴るが如く、一息に脈一二動、二息に脈一動、一息に脈三四動至りて、数の定まらざる脈を云う。
これ即ち結脈の極みにして七死の脈の一なり。

代は乍(たちま)ち軟弱を見わし、乍ち弦緊を見わし、乍ち数脈を見わし、乍ち遅脈を見わし、乍ち浮脈を見わし、乍ち沈脈を見わすが如き、更代常なき脈を云う。精氣虚脱して死に近きの候なり。
又、病毒に痞塞せられて代脈を見わす者あり。
又、邪祟、狐惑を見わす者あり。
動中一止して良久して復動する者を代とする説あり。止に常数ありてその期を愆(あやまら)ざる者を代とする説あり。これみな“止”に長短定不定の別ありと雖も、結脈の論にして代脈の論に非ざるなり。

一般的にも「脈がとぶ(脈停)」ことを総称して「結代脈」ということがあります。
脈診では「結脈」と「代脈」とを分類しています。結代の分類基準は「脈がとぶ(脈停)」の規則性の有無です。詳しくは各自調べておいてください。

脈停の原因は「陽気の接続せざる」こととしています。
気の作用のひとつ、推動作用の不足が原因といえましょうか。とはいえ、血脈を推動する機能が単なる気虚からくるものではないのが明らかでしょう。より重いステージにあることを推測すべきでしょう。

また、結代脈は病毒に痞塞されることであらわれるとも記されていますが、これも実際の臨床でしばしば見受けられることです。湿痰や瘀血により血道が閉塞させられて結代脈を呈するケースです。

屋漏脈は七死脈の一つです。痰湿、瘀血などの病毒も考えられますが、胃氣の減少喪失も考慮に入れるべきでしょう。(平人気象論を参照のこと)

散 解索

散は散乱して聚らざる脈を云う。一に解索と云う。七死の脈の一なり。
又、病毒に痞塞せられて散脈を見わす者あり。危うしと雖も尚生くべし。
諸註家、散と解索とを分けて二脈と為る者は非なり。

たとえば、散脈は難経四難にも登場します。
「浮脈にして大、散の者は心の脈である(浮而大散者心也)。」
この記述では、病脈としてではなく、心脈を構成する脈の要素(ベクトル)として提示されています。
ですのでこの『切脈一葦』における散脈とは別の視点で解釈すべきでしょう。

上記、平人気象論の脾胃の氣の役割を推し広げて考えると、脾胃の氣・中氣・和氣の消耗が懸念され脈状です。

病脈としての散脈について、時代は下りますが『診家枢要』(元代 滑伯仁 著)の脈状説明がシンプルですね。以下に引用してみましょう。

散脈とは聚らない脈である。
陽有りて陰無く、これを按じて指に満ち、散じて聚らず、
来去は明らかならず、漫にして根柢無し、
氣血の耗散、府藏の氣絶と為す。
病脈に在りては、陰陽不斂を主る。
又は心氣不足を主る、大抵は佳脈に非ざる也。【原文】
散、不聚也。
有陽無陰、按之満指、散而不聚、来去不明、漫無根柢、為氣血耗散、府藏氣絶。
在病脉、主陰陽不斂。又主心氣不足、大抵非佳脉也。

『瀕湖脉学』(明代 李時珍 著)の散脈の記載も引用しましょう。これで大体の散脈のイメージが作れるかと思います。

〔体状詩〕
散は楊花の散漫して飛ぶに似たり。
去来して定まり無く至って斉い難き。
産婦の生(産)兆を為すに胎は堕と為す。
久病にて之(散脈)に逢えば、必ず医せず。【原文】〔体状詩〕
散似楊花散漫飛、去来無定至難斉。
産為生兆胎為堕。久病逢之不必医。〔相類詩〕
散脉は拘り無く散漫然としている。
濡の来たること浮いて細く水中綿のごとし。
浮にして遅大なるは虚脉と為す。
芤脉は中空にして両辺有り。【原文】〔相類詩〕
散脉無拘散漫然。
濡来浮細水中綿。
浮而遅大為虚脉。
芤脉中空有両辺。

 

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