五邪を学ぶ 難経五十難

難経五十難のポイント

前章四十九難では正経自病と五邪について記されていました。本章の五十難では五邪について詳述されています。但し、四十九難では「中風、傷暑、飲食労倦、傷寒、中湿」が五邪であるとの説明でしたが、五十難の五邪はそれとは異なる観点で五邪が説かれています。

一体どのような観点による五邪なのでしょうか?また四十九難の五邪との共通点はどこにあるのか?などを考えながら本文を読みすすめていきましょう。


※『難経本義』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。
※現代文に訳さないのは経文の本意を損なう可能性があるためです。口語訳は各自の世界観でお願いします。

難経 五十難の書き下し文

書き下し文・難経 五十難

五十難に曰く、病に虚邪有り、実邪有り、賊邪有り、微邪有り、正邪有り。
何を以て之を別かつか?。
然り。
後ろ従(よ)り来たる者を虚邪と為す。
前従(よ)り来たる者を実邪と為す。
勝たざる所従(よ)り来たる者を賊邪と為す。
勝つ所従(よ)り来たる者を微邪と為す。
自ら病む者を正邪と為す。
何を以て之を言うか?

仮令(たとえば)心病、中風これを得るときは虚邪と為し、傷暑これを得れるときは正邪と為し、飲食労倦これを得るときは実邪と為し、傷寒これを得るときは微邪と為し、中湿これを得るときは賊邪と為す。

虚邪・実邪・賊邪・微邪・正邪の五レン邪

五十難における五邪は虚邪・実邪・賊邪・微邪・正邪という名称になっています。
四十九難では五邪は中風・傷暑・飲食労倦・傷寒・中湿という病名でした。
この違いはどういうことなのでしょうか?

四十九難では五邪を五行分類していたのに対して、五十難では病伝パターンにて五邪を分類しています。しかしその病伝もあくまで五行をベースとしています。

木を主とするなら、その母である水が「後ろより来たる者(従後来者)」、その子である火が「(従前来者)」、木を尅する金が「勝たざる所より来たる者(従所不勝来者)」、木に尅される土が「勝つ所より来たる者(従所勝来者)」、そして木自身が「自ら病む者(自病者)」です。

「来たる者(来者)」という言葉もヒントになります。
“来たる”という言葉は、他所より来るもので動きを示す陽の言葉です。

より具体的に言い直すなら、四十九難は病邪を五行に分類し、五十難は五行的病伝を切り口に五邪分類したといえるでしょう。

切り口は違えど、両難の五邪は全く別物ではありません。ですので、最後の文では四十九難と同じ内容を、病伝ベースでわざわざ解説し直してくれています。

「たとえば心病、中風これを得るときは虚邪」と為すわけですが、この時、火にとって木は母(後ろより来たる者)であるため、虚邪となるわけです。
五行でいうと木乗火であり、四十九難の内容を参考にすると、、、
「望診では赤色の所見、脈証は浮大而弦、病症は身熱、脇下満痛」といった各診察情報がシミュレートできるわけです。
ちなみに望診では、どの部位に赤の反応がでるか?についてはまだ詳述されていません。
面部であれば、目部であれば、それぞれこの部位に赤の反応が強くみられるのでは?といろいろと考察するのも勉強になるでしょう。

他の各邪のパターンも同様です。五行ベースですので、5×5=25パターンあります。
さらに陰陽を加えて、50という大衍の数だけの病伝パターンも考慮すべきでしょう。

鍼道五経会 足立繁久

難経四十九難 ≪ 難経五十難 ≫ 難経五十一難

原文 難経 五十難

■原文 難経 五十難

五十難曰、病有虚邪、有實邪、有賊邪、有微邪、有正邪。何以別之。
然。
従後来者為虚邪。
従前来者為實邪。
従所不勝来者為賊邪。
従所勝来者為微邪。
自病者為正邪。何以言之。

假令心病、中風得之為虚邪、傷暑得之為正邪、飲食勞倦得之為實邪、傷寒得之為微邪、中濕得之為賊邪。

 

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