迎随・調気を学ぶ-難経七十二難-

迎随とは

鍼の補瀉技法の一つとして知られる迎随が本難の主テーマです。
迎随補瀉は鍼灸学校でも教わる補瀉技法のひとつ。比較的ポピュラーな鍼の補瀉法だと言えるでしょう。

その方法が経脈の流れに沿うか否か…なので覚えやすいというメリットがあります。
しかし、不可視の経脈の走行に沿う・沿わないが基準となるため、否定されやすい技法となるデメリットもあります。
かくいう私も経脈の走行に対する迎随には、どうも納得し難いな…という気持ちを持っていました。

しかし、経脈の流行や栄衛の性質を詳細に調べていくことで、七十二難の解釈が少しずつ変わってくるのです。


『難経本義』京都大学付属図書館より引用させていただきました。
※以下に書き下し文、次いで足立のコメントと原文を紹介。

書き下し文 七十二難

七十二難に曰く、経に言う、能く迎随の気を知り、これを調えせしむ可し。
調気の方、必ず陰陽に在り。何の謂い也?
然り。
所謂、迎随とは、栄衛の流行、経脈の往来を知る也。
その逆順に随いてこれを取る。
故に曰く、迎随と。
調氣の方は、必ず陰陽に在るとは、その内外表裏を知る。
その陰陽に随い而してこれを調う。
故に曰く、調気の方、必ず陰陽に在りと。

陰陽・表裏・内外を調気するということ

まずここで注目したのは調気の方という言葉です。補瀉とは書いていないのがポイントです。

結論からいうと、「調気の方とは陰陽に在り」この言葉に尽きます。
そして陰陽とは「内外表裏を知る」ことであると記されていますね。

ここでは栄衛の調和が調気の方であると説かれているのです。
では栄衛の調和とは具体的にどうするのでしょう?

栄気と衛気を交流させることが栄衛の調和につながると考えます。
その方法の一つとして、すでに七十難で「一陰を引持」「一陽を推内」するといった鍼法が記されています。
七十難では垂直方向における陰陽・表裏・栄衛の交流が提示されています。
これに対して七十二難では水平方向における陰陽・内外・表裏・栄衛の協調させることが示唆されているように読み取れます。

水平方向とは「経脈の往来」を指します。人体を流れ行く経脈の流れ、すなわち経脈の往来に沿うか否かが迎随の要素となります。
この迎随の理解はよく知られる迎随補瀉と同じです。

しかし、七十二難本文にあるのは「栄衛の流行」です。
栄気は経脈の流行により把握できますが、脈外を行く衛気の流れは把握できません。

衛気とは脈外を行く気であり、その性質は慓疾滑利との言葉で表現されます。
具体的にいうと、経脈の流行に束縛されない気であり、一定の規則性をもった栄気とは異なるということです。

その衛気を調整することは容易いことではありません。

とはいえ「栄衛は相い随う存在(栄衛相随)」と難経三十難にあるように、
この性質を利用し、栄気の調整を介して衛気をも調整する…そんな調気を提言しているとも解釈できます。

また、衛気が脈外を行くとはいうものの、衛気の走行にもやはり流れはあるのです。
その流れを把握することで、逆順を知り迎随を行うことができるのです。

衛気の出入をつかむヒントとなるのが、経穴になるとみています。
当会では、その衛気・表気の出入を把握する実技も行ってます。

写真 鍼道五経会の鍼灸実技の風景

 

鍼道五経会 足立繁久

原文 七十二難

七十二難曰、経言、能知迎随之氣、可令調之。
調氣之方、必在陰陽。何謂也。
然。
所謂迎随者、知榮衛之流行、経脈之往来也。
随其逆順而取之。
故曰迎随。
調氣之方、必在陰陽者、知其内外表裏。
随其陰陽而調之。故曰調氣之方、必在陰陽。

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