『切脈一葦』脈状⑩-虚脈・短脈-

『切脈一葦』これまでの内容

1、序文
2、総目
3、脈位
4、反関
5、平脈
6、胃氣
7、脈状その1〔浮・芤・蝦遊〕
8、脈状その2〔滑・洪〕
9、脈状その3〔数・促・雀啄〕
10、脈状その4〔弦・緊・革・牢・弾石〕
11、脈状その5〔実・長〕
12、脈状その6〔沈・伏〕
13、脈状その7〔濇・魚翔・釜沸〕
14、脈状その8〔遅・緩〕
15、脈状その9〔微・弱・軟・細〕


『切脈一葦』京都大学付属図書館より引用させていただきました

※下記の青枠部分が『切脈一葦』原文の書き下し文になります。
文末にデジタル図書館へのリンクを貼付。

虚 短

虚は陰証の脈の総名にして虚と云う。一種の脈状あるに非ず。微弱の類、惣じて力なき脈を云うなり。
沈は虚脈の位を云うなり。濇は虚脈の体を云うなり。芤は虚脈の形容を云うなり。遅は虚脈の数を云うなり。弱は虚脈の力を云うなり。短は虚脈の情を云うなり。
虚証にして虚脈を見わす者は論あることなし。
実証にして虚脈を見わす者は真仮の別あり。病毒に痞塞せられて脈虚する者は仮に虚脈を見わす者にして、内実の候なり。
精氣脱して仮に実証を見わして脈虚する者は真の虚脈なり。
全証を参考して脈の真仮を辨ずべし。
遅大にして軟、これを按じて足らざる者を虚とする説あり。これ虚に陰脈の統名にして、その状一ならざることを知らざるの誤りなり。
虚脈は虚の一字にてその義分明なり。もしこれを形容せんと欲するときは微細軟弱などの形容字あり。何ぞ別に虚脈の形状を論ずること有らんや。
この説の如きは虚脈の形容に害なしと雖も芤の形容と同じて、その別を辨じ難し。

短は陰証の脈の縮濇なる情を形容したるものにて、短と云う一種の脈状あるに非ず。
唯 虚は力を主とし、短は情を主とするのみ。その実は一にして濇脈を指すなり。
三指に足らざる者を短とする説あり。これ短の字義を論ずる者にして脈を論ずる者に非ざるなり。

虚脈とは脈状をいうのではない。微弱の類、無力の脈を総じていうのだ、とあります。
また、陰脈を分類して「沈は虚脈の位」といい、「濇は虚脈の体」をいい、「芤は虚脈の形容」をいい、「遅は虚脈の数」をいい、「弱は虚脈の力」をいい、「短は虚脈の情」をいう。

また「短は脈の縮濇なる情」を形容したもの。「虚は脈力を主」とし「短は脈情を主」として表現したに過ぎないとあります。

このように冷静に脈状分類をしている姿は非常に学びになります。

 

鍼道五経会 足立繁久

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