『切脈一葦』脈状⑨-微脈・弱脈・軟脈・細脈-

『切脈一葦』これまでの内容

1、序文
2、総目
3、脈位
4、反関
5、平脈
6、胃氣
7、脈状その1〔浮・芤・蝦遊〕
8、脈状その2〔滑・洪〕
9、脈状その3〔数・促・雀啄〕
10、脈状その4〔弦・緊・革・牢・弾石〕
11、脈状その5〔実・長〕
12、脈状その6〔沈・伏〕
13、脈状その7〔濇・魚翔・釜沸〕
14、脈状その8〔遅・緩〕


『切脈一葦』京都大学付属図書館より引用させていただきました

※下記の青枠部分が『切脈一葦』原文の書き下し文になります。
文末にデジタル図書館へのリンクを貼付。

微 弱 軟

軟、濡耎輭に同じ
微は“かすか”にして有るが如き無きが如くなる脈を云う。
精氣脱するの候なり。
又、病毒に痞塞せられて微脈を見わす者あり。
軽く診すれば即ち見われ、重く按せば絶せんと欲するが如き者を微とする説あり。
この説は微脈の論に害なしと雖も、もし沈微と二字用いるときは軽く診すれば即ち見われるの解、不用なり。故に沈微は唯 沈微の二字にてその義分明なり。

弱はよわき脈を云う。軟と同じ。微細軟弱は皆同類の形容字なり。
故に文章の語路にて微と云いても、微弱と云いても、弱と云いても、軟弱と云いても同じことなり。
軟はやわらかなる脈を云う。弱と同意の形容字なり。
綿絮の水中に浮かぶが如き者を軟とする説あり。水上に浮かべる漚(あわ)の如き者を軟とする説あり。
これみな文字を論ずる者にして脈を論ずる者に非ざるなり。

微脈は脈状として「有るが如く無きが如く」「微かな脈状」といった感触を言います。
その微脈があらわすのは虚証と実証の二証です。虚証では「精気の脱」、実証には「病毒痞塞」です。
詳しい説明は言うまでもありませんね。

軟脈・弱脈(濡脈・耎脈・輭脈)を総合して同類の脈状としています。
やわらかな脈状を軟脈、よわい脈状を弱脈、水の中に浮かび漂う綿を軟・濡の脈という表現があります。
これらの脈状の比喩は分かりやすいですね。
脈状の説明は詳細に記されていますが、脈状が示す証については触れられていません。述べるまでもないということでしょう。

細、小と同じ
細はほそくして力なき脈を云う。一に小と云う。
古人は細と小とを通じ用いて未だその別を論ぜず。
後世に至りて、分けて二脈の名と為す。
然れども別義あるに非ざるなり。

細脈は「細く力のない脈」としており、小脈と同じくしています。

脈状が示す証は、私は微脈に近いものと評価しています。
微脈と細脈は近く、この二脈と(ある意味)対照にあるのが軟脈・弱脈があります。

鍼道五経会 足立繁久

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